1台で切断・剥離・研削の作業をプロフェッショナルにこなすマルチツールには、多種多様な替刃があります。規格の違いや用途に応じた種類・材質、メーカーなど、その種類の豊富さから選び方に悩んでいる方もいるのではないでしょうか。
そこで今回は、マルチツール替刃の種類から選び方のポイント、また主要メーカーごとのおすすめの替刃を詳しくご紹介していきます。
また、マルチツールならではの間違えやすい互換性についても確認していきます。
マルチツール替刃の規格の種類
マルチツールは本体によって替刃の取り付け形状が異なることから、「せっかく買ったのに手持ちの機種に合わなかった」「違いを知らずに購入してしまった」というケースも少なくありません。この紛らわしい替刃の形状の違いを知るためには、まずは「規格」について知る必要があります。
まず、マルチツールは、ドイツのボッシュ(Bosch)によって発売され、国内ではマキタが販売してから火が付いた電動工具です。そのため、国内のマルチツールの規格もボッシュ主導で規格化されていて、2021年現在ではOISとスターロックの2つの規格があります。
OIS
マルチツール販売当初から展開される規格で、スタンダードな取り付け構造であることから多くのメーカーで流通しています。接合部は丸い穴に平らな形状をしていることが特徴です。
スターロック(STARLOCK)
OISの後継として2016年から展開される新たな規格です。OISよりも幅広い材料に対応すべく、接合部の形状が星型&立体的で強固な構造に改良されています。そのため、高出力の重負荷作業に耐えうる性能を備えています。
さらにスターロックには、能力・用途ごとに以下の3つのグレードに分けられます。
- スターロック:ベーシックな汎用性の高い最下位
- スターロックプラス:ハイパワーで素早い切断性能
- スターロックプラス:ウルトラパワーで圧倒的切断性能の最上位
木材をメインに扱うDIYや現場作業であれば、スターロックが最適です。最下位グレードではありますが、スターロックで事足りるシーンは多いでしょう。木材はもちろん、釘の切断も可能です。
中間位となるグレードで、スターロックよりもロング丈のブレードに対応するハイパワーな規格です。
ツーバイフォー材やビス切断などスピーディに行うことができます。
さらにパワフルな切断性能を誇る最上位の規格で、弾性のシーリング除去や鉄筋などの切断まで対応できます。最上位グレードではあるものの、用途としてはあくまで金属切断といった硬い材料向きであり、一般的な木工には不向きと言えます。
互換性について
OISとスターロックの紛らわしい互換性を、分かりやすく以下の表にしています。
本体/替刃 | スターロック | スターロックプラス | スターロックマックス | OIS |
スターロック | 〇 | |||
スターロックプラス | 〇 | 〇 | ||
スターロックマックス | 〇 | 〇 | 〇 | |
OIS | 〇 | 〇 |
上記の表から互換性のポイントをまとめると、
- 下位互換はあるが上位互換はない
ということが言えます。
最下位のスターロックブレードは、規格・グレード問わずOIS含めた全てのマルチツールに取り付けが可能です。
一方で、スターロックプラスとスターロックマックスのブレードは、最下位のスターロックとOISのマルチツールには装着できません。
また、最上位のスターロックマックス対応のマルチツールは、下位互換性からスターロックシリーズのブレードは全て対応しています。
なお、OISのブレードは、OIS対応のマルチツールにしか対応していないため注意が必要です。
マルチツール替刃の用途の種類
マルチツールの強みは、替刃や先端工具を取り替えることで切断・剝離・研削といった多様な作業ができることです。例えばマキタのマルチツールでは、用途に合わせて実に42種類以上もの先端工具が展開されています。
では、マルチツールの代表的な替刃・先端工具の種類を見ていきましょう。
|切断
●カットソー
DIYや現場作業でも最も使用頻度が高い切断用のカットソーで、用途に合わせて開口タイプのカットソーもあります。
さらに材料に応じて
- 木材用:ベーシックな木工や石膏ボードの切断
- 木材&金属用:木材に加え、釘・銅管・ステンレスなどの金属切断
- 金属用:鉄筋などの金属切断
- モルタル・FRP用
などの種類が展開されています。
●ラウンドソー
ブレードが円盤状になっている替刃で、木材のきわ切りや深切り、タイル目地の切断、釘・銅管切断などに使用されます。
|剥離
●スクレーパー
スクレーパーには2つの種類があり、ソフトタイプはシージング材の除去や塗装の剥離に、ハードタイプは硬化した接着剤の剥離に使用します。
●コーキング剝がし用
コーキング剥がしやシーリング除去をはじめ、断熱材・発泡スチロールなどの切断も可能です。
|研削
●サンディング
粒度の種類も豊富で、木材の荒削りをはじめ、金属・ガラス・プラスチックの研磨など、さまざまな研削・研磨に使用できます。
マルチツール替刃の材質
マルチツールの替刃には、対象物に合わせて主に3種類の材質が使われています。
上から材質が硬い順に、
- 超硬
- バイメタル
- 炭素工具鋼
が挙げられ、3つの中で最も硬い「超硬」は金属用ブレード、「バイメタル」は金属用や木材&金属の兼用ブレード、「炭素工具鋼」はベーシックな木材用ブレードやスクレーパーに使用されています。
また、研削に使用するサンディングには、木材の粗削りには超硬チップ、さらに石材やFRPの研削には高耐久のダイヤモンドチップが使用されています。
純正品と社外品の違い
マルチツールの替刃を購入する際、純正品か社外品かで悩む方も多いのではないでしょうか。そもそも、純正品と社外品でどのような違いが出てくるのかも気になるところです。
では、両者のメリット・デメリットを踏まえ、購入するうえでの注意点について解説していきます。
純正品
主にメーカーが販売・保証している正規の部品のことを「純正品」と呼びます。
- メリット:質が高く、メーカー保証がついている
- デメリット:社外品と比べるとコスト高
社外品
ホームセンターなどメーカー外で販売している部品のことを「社外品」と呼びます。
- メリット:純正品に比べて2~3割安いコストで購入できる
- デメリット:品質にバラつきがあり、取り付けができないものもある
社外品は純正品の安心感には敵いませんが、やはり価格の安さは大きな魅力です。
そのため、スターロックシリーズなど性能や質の高さ、耐久性を求めるなら純正品、気にせずガシガシ使うのであれば社外品をというように、用途に合わせて適切なものを選ぶと良いでしょう。
マルチツール替刃セットおすすめ人気ランキング
ここからは、売れ筋ランキング上位に位置する、マキタとボッシュの人気のマルチツール替刃セットを厳選してご紹介していきます。
替刃は消耗品ですので、使用頻度が高ければ単品よりもセットを購入するのがお得です。※記載価格は全て税別です。
また、「マルチツール 替刃 カタログ」と検索するとメーカー別でカタログ一覧も出てくるので、併せて調べてみることをおすすめします。
【木材用(硬質)】
- マキタ カットソー TMA054SK A-62022(5枚入) 10,000円
- ボッシュ カットソー AIZ32BSPC/5(5枚入) 10,400円
- カットソー TMA053BIM A-63937(5枚入) 13,500円
- ボッシュ カットソー AIZ32BSPB/5(5枚入) 13,600円
- マキタ カットソー TMA047BIM A-65545(5枚入) 13,500円
- ボッシュ カットソー AIZ32APB/5(5枚入) 13,600円
- マキタ カットソー TMA060HM A-65567(5枚入) 16,000円
- ボッシュ カットソー AIZ20ATN/5(5枚入) 16,000円
ベーシック形状のカットソーで、材質は炭素工具鋼、用途は無垢木材や2×4材、石膏ボードの切断に適しています。
こちらは同じ形状ですが材質はバイメタルで、用途はコンクリートパネルや石膏ボード、硬質木材、合板などの切断に適しています。
【木材&金属用】
ベーシック形状のカットソーで、材質はバイメタル、用途は硬質木材や石膏ボードをはじめ、釘、銅管、鉄板などの金属切断が可能です。
【金属用】
バイメタルよりも硬い超硬材質のカットソーで、用途は釘、銅管、ステンレス、ビスなどの金属切断に適しています。合板や石膏ボードなどの切断も可能ですが、メインは金属切断と考えるのが良いでしょう。
最後に
マルチツール替刃の用途に応じた規格・種類・材質などについて解説してきました。
マルチツールを取り扱う主要メーカーとしては、今回ご紹介したマキタ、ボッシュの他に、日立(hikokki)、パナソニックも挙げられます。メーカー別で使用感も変わってくるため、口コミレビューや比較動画をチェックしながら、手持ちのマルチツールに合った替刃を探してみてください。